誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命という本を読ませていただいた。

興味のある分野だったので、購入し読了。

2年前に、いろいろ回ってこのあたりの想定を持って上流工程の制作側にヒアリングをしたときには、NetFlixやAmazonプライムが始まる前だったのでこの当たりの感覚が、上流工程にもなかった。

ただ、実際に、NetFlixやAmazonプライムが始まって制作現場ってのも大きく変化しているようですが、やはり、現場にお金を落として制作をしていくようなスタイルにしていかないと業界の制度疲労って直っていかない気もする。

海外からの投資については、案外旺盛な意欲も聞いたりするし、プロモーションという意味でのアニメの注目度も上がっている。

この本では、中国の地政学リスクにもきちんと言及しているし、最終章では海外での日本アニメのプレゼンス(人気があるのか?ないのか?)についても一定の回答を示していて、さすが、「アニメ!アニメ!」の元編集長の数土さん。

そうした意味で、アニメなどの情報を発信していくメディアももう少し、IP意識だけを堅持するのではなくて、フリーライドさせる仕組みというものもプロモーション効果を発揮するんでは?

なんて思ってしまう。

実際に、Webメディアなどのアクセス動態を見ていると明らかに海外からのアクセスは、違法系のところが強い。

そうした意味で、ファンコミは、違法=ファンというのは一心同体だったりもする。

アニメの制作プレイヤーの変遷

アニプレや、東宝の取り組みや「君の名は!」が生まれるプロセスについても、そういった成功体験の裏打ちという見方も面白いし、ある面では事実なんでしょう。

まあ、新書と言う事もあって全部を読んでも1時間ほどで読み終える事の出来る文量では、語り尽くせない部分もあるのだろう。

中国のテセントやbilibili動画などの取り組みやクランチロールの動向などもうかがえて楽しかった。

しかし、中国のメジャー系の会社は基本、国策会社だから、独立していても国の統制管理の下で運営されている事を勘案すると、これ以上、投資をしていくというのは無理があるでしょうし、そうした意味で、日本国内に会社を作っている法人をうまく使って制作パートナーとしていく方がいいでしょう。

一方、クランチロールについては最近、視聴ユーザーがその画像品質に不満を持って、解析などをして違法動作サイトへ回忌するという動きが見られる事もフォローしておきたい。

この傾向って、やはり日本でおこったDAZNの騒動と同じで、今までスカパーという安定環境で見ていた人たちが、HDで配信されているとしても遅延やフレームレートの低下、ブロックノイズ、バッファリングなどに耐えられないのと同じで、ストリーミング配信というものの品質レベルの国際規格化などがないときつい気もする。

やはり、ほぼ同時刻にサイマル放送で見ることが出来るからと言っても画質ってものきちんと担保されていないとやはり課金ユーザーは100万人が天井になってしまうかも知れないし、実際100万人だったらマーケットしてはNetFlixやAmazonプライムほどの魅力を発揮する事は難しいかも。

この当たりはファンコミュの出自が仇になっているのだろうな。

いくら大手からの出資を受けて、会社として成り立つようになっても出自はファンが支え作り上げたサービスなので、そのファンの期待などを裏切ってしまうのは、ユーザーのニーズをイベントだけでは救い上げる事が難しいのでしょう。

また、先日、来日したサウジ一行などもアニメに興味を示している事も考えると、ある意味、独裁国家であるサウジや東南アジアに重きをおいてビジネスをしていく方が、メリットもあるように思う。

自分の経験を言えば、アプリなどでも日本の言語でしか提供していなくてもサウジアラビアなど中東諸国からのダウンロードも旺盛だったわけで、そうした国に、テレビではなくネット配信などでコンテンツをまず購入して貰い、一緒に制作をしていく事で、ハリウッドの巨大資本とは違うマーケット形成もしていく事ができるでしょう。

基本、アニメは1万人の熱心なファンがいてそうした人が円盤を買ったりグッズを買ったりしてくれるわけで、そのようなファンを世界各国で作っていく事で日本だけではない同規模のマーケットを世界のあちらこちらでも作る事が出来る。

そうした意味で、NetFlixやAmazonプライムの存在は大事だし、ヨーロッパ圏ならばその現地のネット配信ソリューションを活用する事で定額配信と都度配信のマーケットを確保できるわけで、円盤ビジネスだけに終止していた既存のビジネスプランの脱却は可能だろう。

言及して欲しかった点

あと、ちょっと言及して欲しかった部分としては制作委員会の予算上限の話。

主幹事になり得る会社が1億しか出せないなら、そこに加わる参加企業はそれを下回る金額しか拠出出来ないという問題。

この問題を解決して、ファンド組成などに外資の資金だけを取り込んでいければ現場制作予算はもっと上がる。

今まで、2億で作っていたアニメが6億くらいで作成出来れば、現場に落とせる金額もその分増やしていけるので、後継の育成や市場の拡大、スタジオシステムの刷新なども図る事の出来るわけで、今の制作金額のまま推移しても雨後の竹の子のように、新たなプレイヤーが生まれて、古きを継承していくだけのマーケットにしかならないだろう。

そんな事を考えられた本である。

個人的には、萌えと言われるような可愛い目の大きな女の子が出てきたワイワイ言っているだけの作品って好みではないので、もっと骨太な作品やオリジナルの企画なども盛んになっていけば良いのだろうと。

また、NetFlixやAmazonがうまく乗ってこないのは、プレゼン下手と、秘匿主義というものの原因もあるのかも。

自分の権益を侵されたくない既存の会社がどう変わっていくのか、波をつかみ損ねてしまう会社は脱落していくんだろうな。

メディア運営者から、ジャーナリストとなった数土さんの動向にも注目したい。